徒然

すべて真実(≠事実)

僕のヒーローについて

 

キンコン西野を尊敬している、と言ったら、電話口からは訝しげな声が返ってきた。

 

「それ、あんまり言わないほうがいいよ」

 

ええ、そうなの。好感度が低い、というのは本人がネタとして言っているだけかと思っていたけれど、どうやらそうでもないらしい。テレビでは印象最悪なんだぜ、と彼は言う。なんの話の流れでそう言ったのかは忘れた。隙あらば通話していた頃があった。話は尽きなくて、尽きたらトランプゲームを始める。電話越しに。もう2、3年も前のことだ。

 

でも、と僕は思う。君が褒めてくれた僕の諸々の行為はけっこう、西野さんに影響されてのことだってあるんだぜ、と思う。それを言ったら「ええ、そうなの?」ってこれまた嫌そうな声が返ってきて少し笑った。

 

 

キングコング西野の、テレビでの活躍は知らない。僕が知っているのは彼が絵本作家になってからの一連の出来事だ。テレビでの印象が悪いと聞いてピンとこなかったのは、彼がテレビ以外の分野では圧倒的な信頼を勝ち取っているからだ。

 

制作した絵本は32万部、ビジネス書は10万部発行され、クラウドファンディングでは総額1億円を超える支援を1万5000人から受けた実績がある。テレビでも人気者だからかな〜なんて思っていた(違った)

 

イメージが最悪でも、彼がやっていることは面白い。ハロウィンのあとの渋谷はゴミだらけと聞いて「じゃあそのゴミを拾って作品をつくろう!ハロウィン翌日朝6:00渋谷に集合ね!」とかなんとか言ってそれをイベント化してしまう。

 

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天才だと思った。渋谷のゴミ問題なんて放っておいたらただの「問題」なのに、それをエンターテイメントにしながら解決してしまう。32万部発行した絵本だって、ただ絵本を作っただけじゃない。絵本ってどうして絵もストーリーも文も全部ひとりでやるんだろう?映画は何人もで作るのに。ってことで、色ぬりのプロ、線画のプロ、背景のプロ、とかとか、細かく分けたそれぞれの分野のプロフェッショナルを集めて「世界初、完全分業制の絵本」を作った。そんな金かけて作ったら採算とれねーよ、という「常識」をはねのけ、1万部売ったらベストセラーと言われている絵本業界で32万部。作っただけじゃなくて、売り方まであれこれ仕掛けて、32万部。天才か。絵本制作以外でも彼のおもしろい取り組みはまだまだあるが、まあ割愛。気になったら彼の新刊でも読んでくれ。

 

 

だからね。テレビで彼を叩く風潮に流されて快く思わないのは勝手だけど、世界の面白さ逃しちゃってるよ、と思う。確かに伝え方や言動はやかましいかもしれないけどさ。ね。それに。

 

 

「尊敬しているなんてあんまり言わない方がいい」って、なんともひどいアドバイスだと思った。多くの人間がキンコン西野に対して良くない印象を持っていることが前提であること。僕の、彼を尊敬する気持ちを蔑ろにしていること。そのほか諸々。

 

それでもその友人とは、今でも普通に仲良くしている。月に一度は酒を酌み交わす。それだけで付き合いをやめるほど魅力のない人ではないし、こちらもそれほど単純ではないからだ。現実とはそんなものでしょう。この人にはこういう部分がある、と心に留める事柄がほんと少し増えただけ。その発言は嫌だったけれど、彼のことが嫌いになったわけではない。

 

 

とか、当時思ったあれこれ。すっかり忘れていたのだけれど、西野さんの新刊がブックカフェに並んでいるのを見て思い出した。真っ赤な表紙の『革命のファンファーレ』

 

文字サイズでかいし、余白たっぷりだし、2時間もあれば余裕で読み終わるだろうから買わないでいいや。そう思って席まで持っていって、するする読み進めて、あ、これはやられたなと思った。まずい。面白い。

 

たとえば、こんなことが書かれていた。

 

人がお金や時間を割いて、その場に足を運ぶ動機は、いつだって『確認作業』で、つまりネタバレしているモノにしか反応していない。

 

モナリザを見にいく、グランドキャニオンを見にいく。見れるものはわかりきっているのに、それでも行く。わかっていて、お金を払う。とまあ、そういうことらしい。(だから彼は自分の絵本を全編ネットで無料公開して、ちゃんと結果も出した)本質を見極めるとはこのことか。

 

僕はこの本を結局レジに持っていく。買わなくていいやと思って読み始めたこの本を、結局、持って行ってしまう。面白いと知っているから。中身を知らなかったら買おうとは思わなかった。知っているから、買う。一般的には逆だと思われるこの関係は、やはり真実だった。もうお手上げですよ。僕はまさに、この本に書かれた通りのことをしている。ブックカバーおかけしますか?あ、お願いします。

 

そして本の最後に羅列された言葉の強さに、また突き動かされる。

 

 

最近情報を終えてなかったけど、やっぱり彼は僕のヒーローだった。彼はいつも行動のきっかけをくれる。行動を起こすトリガーを引いてくれる。今回もきっと。たぶん、何か始めるんだろうなという予感がある。

 

 

 

 

 

本を読み終わってうずうずして、ひとます例の友人に聞いてみた。あまりにも些細な会話だったから、忘れてしまっているかもしれない。2、3年前だし。

 

 

キンコン西野きらい?」

「最近あまり見ないからとくになんとも」

 

 

そんなもんだ。

 

 

「すごく前にさ、僕がキンコン西野を尊敬してるって言ったら、ええ…って反応してたの覚えてる?」

「あー、覚えてる覚えてる」

 

 

彼は覚えていた。僕はもう、なんだかそれだけで満足だ。思わず小さく笑う。本を読んで、昔を思い出して、友達と共有して。読んだことは確実に残る。こんだけ強烈なもの読まされたら残るに決まってる。現にこうして僕は文章を書いてしまっている。2000字越え。彼の本を読まなかったら生まれなかった文章が、2000文字ぶん。もちろん、文字だけじゃない。

 

 

 

 

ありがとう、僕のヒーロー。

 

 

 

 

さあ、次はなにから始めようか

 

 

 

 

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